インドで進む少子化
インドといえば、人口大国というイメージが強いです。私が住んでいるムンバイでも、路上には人があふれています。しかし、そのインドでいま静かに、しかし急速に少子化が進んでいる、という記事です。
参考記事:
この記事によれば、インドの合計特殊出生率(TFR)はすでに1.9まで低下しています。これは、人口を長期的に維持するために必要な水準を下回る数字です。今後2050年代頃までは、インドの人口はしばらく増え続けるものの、将来的な人口減少は避けられないとみられいます。

少子化になったインド
1950年、インドの人口は約3.6億人でした。当時、女性1人が生涯に産む子どもの数は平均6人程度。大家族は珍しくなく、祖父母、両親、兄弟姉妹、親戚が一緒に暮らすことも多かった。
ところが現在、インドの人口は14億人を超え、中国を抜いて世界最多となった一方で、出生率は急速に低下しています。デリーのTFRは1.2、タミル・ナドゥ州や西ベンガル州では1.3と、フィンランド並みの低さです。

国連は、インドの人口が2060年代まで増え続け、その後ゆっくり減少すると予測しています。しかしこの記事は、この見通しにやや懐疑的です。なぜなら、国連予測は「出生率が今後2.0前後で安定する」という前提に基づいているからです。しかし、世界を見ても、出生率がいったん大きく下がった後に再び回復した国は少ないため、出生率が自然に2前後で止まる保証はありません。
なぜインドで出生率が下がっているのか
インドの少子化には、いくつかの要因があります。
第一に、女子教育の普及。インドでは1990年代以降、女子の就学率が大きく上がりました。
第二に、親の教育投資意識の高まり。現代のインドでは、子どもを多く持つよりも、少ない子どもにお金と時間を集中させる考え方が広がっている。記事ではこれを「quantity-quality trade-off」、つまり「量と質のトレードオフ」と説明しています。子どもが2人いれば教育費は分散しますが、1人であれば、私立学校や塾、習い事により多く投資できる。特に都市部の中間層では、子どもは1人でよいけど、その代わりしっかり教育を受けさせたいという価値観が強くなっています。
第三に、核家族化。昔は祖父母や親戚と同居する拡大家族が一般的でしたが、現在は核家族が増えています。育児を助けてくれる家族が近くにいなければ、子どもを多く持つ負担は大きくなリマス。都市化や労働市場の変化によって、家族の形も変わってきました。
第四に、男児選好の弱まり。以前は男の子が生まれるまで子どもを産む、という傾向が出生率を押し上げていました。しかし近年は、女の子でもよいと考える親が増えており、男児選好は弱まっています。
第五に、テレビやスマホを通じた価値観の変化。テレビドラマやSNSでは、都市部の小さな家族、教育熱心な親、少人数の家庭が描かれます。こうしたイメージが、地方や農村にも広がっている可能性があります。
出生率は簡単には戻らない
インドは今後、出産奨励金や第3子への給付など、さまざまな少子化対策を打ち出すと言われています。実際、アンドラ・プラデシュ州では、第3子を持つ夫婦に給付金を支払う政策が発表されています。
しかし、他国の経験を見る限り、出生率は、教育、雇用、住宅費、育児負担、価値観、女性の選択など、多くの要因によって決まるため、補助金や呼びかけだけで出生率を大きく回復させるのは難しいでしょう。
インドの出生率低下は、短期的なトレンドではなく、過去70年にわたって続いてきた大きな流れなので、急に反転する可能性は低い、と結論づけられています。
おわりに
私の仕事で話すインド人とは、子どもの教育の話題になることがよくあります。驚かされるのは、その教育投資の大きさです。中学・高校はムンバイのインターナショナルスクール(年間授業料は100万円〜500万円を超えることも珍しくありません)に通わせ、その後はアメリカやイギリスのトップ大学へ留学させる・・・そんな話を頻繁に耳にします。
